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書籍紹介『藤子・F・不二雄の発想術』



ドラえもんルーム 編
『藤子・F・不二雄の発想術』
小学館新書  2014年

お役立ち度:★★★★☆
読みやすさ:★★★★★
対象者:初心者〜上級者
【概要】
あのドラえもんの作者の、インタビューやエッセイの言葉を集めた本。
作者の経歴、アイディアの出し方、話のつくり方、作者が目指しているものなどが惜しげもなく明かされている。
ドラえもんやその他の多くの名作はどのようにして生まれたのか。そのひみつに触れられる作品です。


【ここがすごい】
僕、F先生が大好きなんですよ。
生まれて初めて読んだマンガというのが、たぶんドラえもんです。それか『すーぱーマリオくん』か『つるピカはげ丸くん』(絵本を読む年齢のときにマンガも読んでいたので、正確には覚えていません)。そんな幼少期だったもんだから、未だに僕の中には「マンガとはドラえもんとかすーぱーマリオくんみたいなやつである」という認識があります。青年マンガとかもドラえもんの発展形とかバリエーションだと思ってます。
そんな大好きなドラえもんを描いたF先生は、何を考えて描いていたのか。F先生が目指していたものはなんなのか。それが垣間見える本です。描く編第3回での「師を見るな、師が見ているものを見よ」という言葉どおり、F先生が見ていたものを知れたことは僕の大きな財産になっています。

この本に収められたF先生の言葉は学ぶことが多いものばかりなのですが、中でも特に僕が好きなのがこの言葉です。

僕のまんがの主人公は、かならず空を飛びます。
それは僕自身、空を飛びたいからです。


この言葉が作家としてのF先生の姿を見事に表していると思うのです。空を飛びたいという、子どもが考えるような楽しそうなこと。そんなささやかだけど誰もが思うような夢を、マンガで形にしてこられたのが、F先生という人なのではないでしょうか。
きっと、「空を飛びたい」なんて素朴なことでいいんです。自分の中に当たり前にある、「あんなこといいな、できたらいいな」という思いを忘れないこと。創作の楽しさや素晴らしさというのは、そんなところにあるのかもしれません。

そんなホンワカしたことを言っている一方で、仕事に対する真剣さをのぞかせる言葉もあります。

僕はまだ描き尽くしたとは思っていない。
徹底的にあと一滴もしぼれないというところまで
しぼって描いてみたいんです。
『ドラえもん』の通った後は、
もうペンペン草も生えない、というくらいに、
あのジャンルを徹底的に描き尽くしてみようと。


これは、F先生が亡くなった年の言葉です。最晩年になってもまだ満足していない。恐るべき情熱。それなくしてドラえもんなんていう化け物みたいな作品は生まれなかったことでしょう。


…というように僕はこの本にものすごい感銘を受けたのですが、それは僕が元からF先生を大好きだからでしょう。F先生の作品を読んでない人には響かないかもしれません。しかし、マンガ家志望者に向けたアドバイスなども多く収録されているので、参考になるところはあると思います。幼児向けマンガを長く描かれていただけあって文章も分かりやすく読みやすいです。読んでみて損はない本でしょう。

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