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書籍紹介『格闘技の科学』



吉福 康郎 著
『格闘技の科学 力学と解剖学で技を分析!』
サイエンス・アイ新書  2011年

お役立ち度:★★★★☆
読みやすさ:★★☆☆☆
対象者:バトルマンガを描きたい人
【概要】
スポーツ・バイオニクスが専門の大学教授である作者による、格闘技の技術の解説本。
扱う格闘技は柔道・空手・ボクシング・ムエタイ・中国拳法・路上での武器を使ったケンカなど多岐にわたる。それらについて力学や解剖学の観点から、技の威力を高めている要因が解説されている。
イラストが豊富であり、バトルマンガを描くために非常に勉強になる。


【ここがすごい】
バトルを描くのは難しいです。
描く編第4回でパンチの描き方に触れましたが、パンチ一つ描くにも考えなければいけないことはたくさんあります。パンチはただ腕を前に突き出す技ではありません。全身で発生させた力や勢いを、腕を通して相手に伝える技です。ただ腕を伸ばすのではなく全身を上手く動かさなければ、十分な威力は発揮できません。
それでは、どのように体を動かせばパンチは強くなるのでしょうか。それを解説してくれるのがこの本です。しかもそれだけでなく、「そもそも強いパンチとは、物理学的にどのように説明されるか」という話から始まります。

パンチやキック、体当たりといった打撃技の衝撃力は「速さ」と「重さ」をかけ算すると計算できます。「速さ」は体を鍛えたり技のフォームを改善することで高められます。「重さ」も、前のめりになって相手に体重をかけるようにするなどして高められます。
では「速いが軽いパンチ」と「遅いが重いパンチ」では相手へのダメージがどう変わるか。それぞれのパンチを打つにはどんなフォームで打てばよいか。体のどの筋肉をどう使うとよいか。そういうことが解説されています。

マンガでパンチを描くときにそうした違いを描き分けられると雰囲気がでます。小柄で素早いキャラなら「速いが軽いパンチ」の方がそれっぽいわけです。

ありがたいのが、パンチやキックなどの技の出し方を描いたイラストが豊富に載っていることです。物理学や筋肉の解説は、正直少し難しいです。しかしそこは流し読みしてイラストを模写するだけでも、良い練習になります。
しかしこの本はあくまで「格闘技の解説書」であり、絵の教本ではありません。教本ほどイラストの数は多くないですし、アングルも限定的です。格闘技の技の理屈を知り、ついでに模写もするという使い方がよいでしょう。イラストの中でしっかり描けるようになりたいものがあったら本文も読む、という形だと興味をもって物理や筋肉の解説も読めると思います。

パンチやキックだけでなく、投げや関節技、防御や武器の使い方などさまざまな技が解説されています。この本で勉強したり絵の練習をすれば、バトルを描くための基礎的な知識や技術はかなり身につくことでしょう。

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