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書籍紹介『荒木比呂彦の漫画術』



荒木飛呂彦 著
『荒木飛呂彦の漫画術』
集英社新書  2015年

お役立ち度:★★★★☆
読みやすさ:★★★★★
対象者:中級者〜上級者
【概要】
『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦氏による、マンガの描き方の本。
『ジョジョ』という超個性的な作品が生まれるに至った過程、その元となった荒木氏のマンガに対する考えが記されています。
マンガを描くのに正解はありません。そんな中で荒木氏は何を大事だと考え、どのように歩んできたのか。その中で荒木氏が見つけた、「王道漫画」を描くための「黄金の道」とは。
「黄金の道」に至る、荒野を渡り切る心の中の地図となる1冊です。


【ここがすごい】
マンガ界広しと言えど、ジョジョほど個性的なマンガというのは数少ないでしょう。そんなジョジョは、どのような考えの持ち主から生み出されたのでしょうか。僕はよっぽどの変人じゃないとあれは描けまいと思っていたのですが、インタビュー記事などを見るたびにその考えを覆されます。
ジョジョは、独特のセンスを持った作者が本能のままに描いて生まれたものではありません。ごく普通のマンガ家になりたい青年が、「良いマンガとはどんなものか」ということを徹底的に追い求めた結果生まれたものなのです。

「良いマンガ」を描こうと思ったとき、一番簡単なのは現在人気が出ているマンガをそのままマネすることです。現にたくさんの人から「良い」と思われているのですから、参考にしない手はありません。しかしそれだけでは二番煎じの魅力のないマンガでしかありません。人気マンガが人気マンガたる根本的な「良さ」を見つけ、その「良さ」を自分だけの方法で形にしなければならないのです。
この本の中でも荒木氏は、さまざまなマンガを例に出して「良いマンガとはどんなものか」を語ります。『ドラゴンボール』、『こち亀』、『蟲師』、『孤独のグルメ』、『テルマエ・ロマエ』…。マンガだけでなく映画『ミザリー』や『ダーティハリー』、果てはふなっしーやくまモンにまで話は及びます。荒木氏は決して独自のセンスだけでジョジョを描いたのではありません。様々なものからどん欲に学び、自分が進むべき「黄金の道」を見つけていったのです。


考える編第3回のセンスの話でも触れましたが、マンガを描くには判断力が必要です。キャラのセリフ一つとっても無限の選択肢の中から一つだけを選らばなくてはなりません。荒木氏が歩んできた「黄金の道」を知ることは、趣味のマンガを描いていて迷ったときにも役に立つでしょう。

ちなみに「黄金の道」は、この本の中で荒木氏が実際に使われている言葉です。「王道漫画の描き方」を「黄金の道」と表現されています。ジョジョの作中に出てくる「黄金の精神」とも被る表現であり、こんなのがマンガの描き方本で出てきたことで、荒木氏がジョジョを描けるのは独特センスがあるからなんかじゃなくて、黄金の精神を持っているからなんだなあと思いました。


さらにこの本の中では荒木氏が描いた短編マンガについて、詳しく解説されている部分があります。その短編のページが引用されているので別に読んでなくてもいいんですが、やっぱり先に解説なしで読んだ方が楽しめると思います。ネタばれもありますし。
短編集『ゴージャス☆アイリン』に収録された『武装ポーカー』と、短編集『岸部露伴は動かない』は先に読んでおいて損はないでしょう。

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