【コラム】第4回「炒飯を描いてみる」
かねてより美味しい炒飯をつくれるように練習してきた僕は、ついに自宅でお店クオリティの炒飯をつくり出すことに成功した。
最初はお米がダマになったものしかつくれなかった。
「炒飯は火力が命」と聞いて最大火力で炒め、お米を黒コゲにした日もあった。
「ご飯と卵を混ぜてから炒めるといい」と聞いて試したが、できあがったのは炒めた卵ご飯で肩を落とした日もあった。
今、お米の1粒1粒を油と卵でコーティングしてパラパラにしつつ、水分を飛ばさずにお米をふっくらと仕上げた理想の炒飯の写真を撮りながら、僕は思った。
「この炒飯を描けるようになりたい。この美味しそうさを絵にしたい」と…。
これは、幾度もの挑戦を経て美味しい炒飯をつくれるようになった男が、次は画力で炒飯に挑む物語である。
(※奥にある味玉は、ゆで玉をチャーシューダレに漬けてつくったものである。チャーシューも自作なのだ)
【トレースしてみる】
そんなわけで炒飯の絵を練習してみました。今回はその練習の過程をみなさんにお見せしたいと思います。
そもそも僕は料理の絵を描くのが苦手です。料理って複雑な形状をしてるので、炒飯と分かる絵を描くのも一苦労です。描く編第2回でのレベル分けで言えば、レベル1のWHATを表現できるかどうかも怪しいものです。
そんなわけでまずは写真をトレースするところから始めてみます。
写真を半透明にして線をなぞります。
アップにして細かいところまで線を引きながら観察していると、いろんなことが分かります。
お米をコーティングしている油がテカり、ハイライトができています。この油によって炒飯がパラパラになっているのです。また、お米とお米の間にスキマができていることからこの炒飯のパラパラさをうかがうことができます。お米とお米がくっつかずに一粒一粒が独立に存在しているのです。
そんなこと考えて描いてるとお腹が空いてきます。今僕が感じている「炒飯の美味しそうさ」を伝えられるような絵を描けるようになりたいものです。
できあがり。
まあトレースしたのだから、良い感じの絵になっているのではないでしょうか。
右下は描きこみを多く、左上は少なくして立体感を出してます。描きこむのが面倒だったというわけではなくもないです。
トレースしながら気づいたのが、具材を描き分ける必要があるということ。今回の炒飯にはチャーシューと卵とネギが入っています。すべて細かいサイズになっており、適当に描くと米粒と同じに見えてしまいます。カラーで描けばその心配はないのですが、今回は白黒で描けるようにがんばってみましょう。
チャーシューは黒っぽく描き、卵はフワフワ感を出すように描くと良さそうです。ネギは写真だとよく見えないのですが、四角い形に切ってあるので四角く描くことにしましょう。
お米のハイライトはあんまり効果が出ていない気もします。線を省略しすぎたのでしょうか。
かといってトレースなしでこれ以上に細かく描くのは大変そうです。線を省略しながら描くということも考えなくてはなりません。お米のハイライトのやり方についてはいろいろ試しながら模索していきましょう。
【何も見ずに描いてみる】
トレースして気付いたことを活かしながら描いてみます。
具を描き分ける、お米にハイライトを入れる、適度に線を省略する…。
できあがり。
…美味しそうじゃない。
炒飯というより具が混ざった普通の白ご飯に見えます。どうしてこうなったのか。
画力レベル1の話を思い出しましょう。炒飯と分かるように描くためには、炒飯の特徴をとらえなくてはなりません。炒飯にあって白ご飯にはない特徴とはなんでしょうか。
それは、お米のパラパラさ。1粒1粒が油と卵でコーティングされ、お米とお米がくっついていないことです。
それを絵で表現するには、1粒1粒を個別に描かなければなりません。お米とお米の間にスキマがあることからパラパラさが分かるということでしたから、スキマも描くと良さそうです。
結局、描きこみを省略したことがそのまま炒飯の特徴を殺すことになっていたようです。炒飯を炒飯らしく描くにはお米1粒1粒をしっかり描かなければいけないのか。なんてこった。
しかし描く編第1回で描いたように、上手になるための第1歩は「線を多く引くこと」でした。たくさん描けばよくなるというのは理屈が合います。がんばろう。
そんな反省を踏まえてもう一度、何も見ずに炒飯を描いてみました。
だいぶ良くなったのではないでしょうか。
もっと描きこんでもいいのでしょうが面倒なのでここまでにしました。
【考察してみる】
何も見ずに描いた1回目よりは炒飯に見えるし美味しそうです。でもまだまだ改良の余地はありそうです。
とりあえず、お皿が合ってないですね。お皿のせいで炒飯っぽく見えないぐらいです。もっと中華って感じのお皿にするだけでチャーハンって分かりやすくなるし、美味しそうになりそうです。そういう意味で、味玉をそえるよりもレンゲをそえた方が良かったですね。炒飯の横にラーメンと餃子を描くのもいいでしょう。ますますお腹が空いてきましたね。
炒飯自体でいうと、四角く描いたネギに違和感があります。そもそも写真を見るとあまりネギが写っていません。けっこう多めに入れたし食べるとネギのさっぱりした風味を感じて美味しかったのにどうしたことか。
写真をアップにしてよく見ると、ネギは火が通って透明になっていました。形状もお米とあまり変わりありません。これなら次からはネギは描かなくても大丈夫な気がします。
逆にチャーシューはもっと大きく描いてもよかったように思います。チャーシューは大きい方が美味しいに決まっています。絵的にもお米粒が白い分、黒っぽいチャーシューが大きいとコントラストが効いて締まりそうです。
お米のハイライトは効果があるような気もするし、ないような気もします。でも理屈としては描いた方が良いと思うんですよね…。他の料理にも共通しそうなところなので、効果的な描き方を模索していきたいところです。
【終わってみる】
まだまだあるのですが、今回はこんなところにしておきましょう。
最初はレベル1も怪しいところでしたが、最後の絵では炒飯ということは分かるし美味しそうです。「美味しそう」というHOWが表現できているのでレベル2にはなれたのではないでしょうか。「めちゃくちゃ美味しそう」というレベル3にはまだまだですね。これからもがんばっていきたいです。
今までは料理の絵を練習するときはネットで拾った絵で練習してたんですが、あまり練習に身が入りませんでした。今回は自分でつくった料理だったため思い入れがあり、高いモチベーションで臨むことができました。何より自分でつくって食べているので、どんな材料が入っているか、どんな味や食感かということを知っているので描きやすかったです。
みなさんも、料理を上手く描きたいときは自分でつくるところから始めてみてはいかがでしょうか。正気の沙汰ではないですね。やめときましょうね。
(でも実際のところ、料理をめちゃくちゃ美味しそうに描く人って、自分で料理するんですかね。全然しないのに美味しく描けるのなら、どうやって上手く描けるようになったのか教えてほしいものです)
個人的に料理は上手に描けるようになりたいので、また似たような企画をやるかもしれません。
それでは今回はこのへんで。