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書籍紹介『こころの処方箋』



河合 隼雄 著
『こころの処方箋』
新潮文庫  1998年

お役立ち度:★★★★★
読みやすさ:★★★★★
対象者:いつも悩んでばかりの人
      キャラに名言を言わせたい人
【概要】
筆者の河合隼雄氏は臨床心理学者の第一人者である。臨床心理学者とは、平たく言えばこころのお医者さんだ。
うつ病などの特別な事情はない人でも、何か言葉にできない「生きづらさ」を感じるときはあるだろう。この本はそんな悩める現代人に、そっと生きるヒントを与えてくれる本である。


【ここがすごい】
「生きるヒントを与えてくれる本」というと、うさんくさい印象を受ける人も多いでしょう。なんか宗教っぽいですし。
しかしこの本に書かれているのは、魔法のように人生を激変させる言葉ではありません。言われてみればたしかにその通りだという、「常識的」なことが書かれています。
魔法の言葉を欲する人は多いでしょう。しかしそんなものを求めている間は悩みは尽きません。当たり前の常識的なことを見失い、非現実的な考えにとらわれたときに、人は心を病みます。

この本では心を病んだ患者さんの実例や、寓話が多くとりあげられています。その登場人物はどんな常識を見失っているのか、筆者の河合さんの考えが語られていきます。
ここで面白いのが、河合さんは臨床心理学の大御所でありながら、自分の説を断定しないことです。「〜だろう」、「〜と思われる」という言い回しが多く使われています。
というのも、この本で一番最初に語られる常識が「人の心などわかるはずがない」ということなのです。心理学の専門家というと人の心の中をズバリと言い当てることもできそうだが、そうではない。人の心など分かるはずがない。心理学を研究しているとそれがよく分かる。むしろ「人の心など分かるはずがない」と確信をもって知っているのが専門家の特徴だ、と河合さんは言います。

河合さんは偉そうにありがた〜いアドバイスを与えようとしているわけではありません。人の心のことは河合さんにも分かりません。分からないなりに、専門家としての知識と経験から「こうじゃないかなあ」と考えていることを話されています。読者と同じ目線で語り、分かりやすい簡単な言葉で説明してくれる様子からは、河合さんの優しい人柄が感じられるようです。

ただ生きるだけでも大変な世の中なのに、創作なんか始めちゃうと余計に悩みが増えます。悩みを解決してくれる魔法の言葉が欲しくもなりますが、実はそんなものは必要ありません。むしろ僕たちはついつい魔法の言葉を求めてしまうものだから、今日もこうして悩んでいるのかもしれません。
自分もそうかもしれない、と思った人は、ぜひこの本に目を通してみてください。見失っていた「常識」に気付けるかもしれません。



あと、「人生の常識」を考えることって「どう生きるか」を考えることにもつながります。そういうことを考える習慣が身につくと、マンガにも活かせると思います。
例えば、主人公が悩んでいるときに師匠キャラが良いこと言うシーン。ここで師匠キャラのセリフを考えるには、作者自身が「どう生きるか」ということに対して答えを持っていないと難しいです。『こころの処方箋』みたいな本を読んで「どう生きるか」ということを考える参考にすると、キャラに名言を言わせやすくなるかもしれません。

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