【コラム】第1回「内向き思考」
本編ではどこまでも無限に広がる外向き思考の素晴らしさをお話ししました。
それに引きかえ内向き思考は有限で閉鎖的で、クリエイティブさのかけらもない負け犬の思考法であるかのように思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし内向きの思考にも良い点はあります。有限で閉鎖的であることの強みもあるのです。
今回は内向き志向が活躍する場面についてお話しします。
【無限は怖い】
基本的にアイディアを生み出すときは、たくさん生み出すことができた方がよいでしょう。しかし、実際にたくさんのアイディアを生み出すと困ったことになります。たくさんのアイディアのうち、どれを採用すればよいのか分からなくなってしまうのです。
ストーリーを考えているとき、主人公が敵を倒す方法をどうするか悩んだとしましょう。いい方法を思いついたとしても、もっといい方法があるかもしれません。自分が気付いていない致命的な見落としがあるかもしれません。アイディアは無限なので、無限の可能性があります。
ストーリーを思いついてマンガを描き始めたとしましょう。そこでもコマ割りや構図、セリフなど考えることはいくらでもあります。そしてそれぞれに無限の選択肢があるのです。
本編でも触れましたが、マンガは学校の勉強とは違い、正解はありません。
無限の選択肢の中から自分がベストだと思うものを選んでよいのです。
しかし選べるのは一つだけです。
マンガを描くという行為は「無限の選択肢の中から一つだけを選び出す」という行為の連続です。
ストーリーを考えるのもそう、絵を描くのもそう、キャラクターをつくるのもそう。
それが楽しいところでもあり、難しく、しんどいところです。
この問題は外向き思考では解決できません。
本編では選択肢を無限に増やせる、ものすごく強力でロマンのある思考法という面を描きました。しかし選択肢が増えると同時に、苦悩の種も芽吹いていくのです。
【まとめる=有限・閉鎖的】
そこで内向き思考です。有限で閉鎖的な内向き思考は、アイディアを野放図に広げるのではなく、一点に集約していくことができます。それにより無限の選択肢を減らしていくことができるのです。
そのときにポイントとなるのは、内向き志向の「内」とは何か、ということです。
本編では「問題」に対して内向きに考え、この問題を解くにはあーでもないこーでもないと考える様子を描きました。しかし先ほどの「アイディアを広げるのではなく一点に集約する」という観点からすると、問題に対して内向きに考えるというのは話が合いません。
無限に広がるアイディアを「特定の方向に向けて集約していく」というイメージになります。
それでは、このアイディアを集約していく先とはどのようなものなのでしょうか。
【きれいな構造を目指して】
内向き志向でアイディアを絞るというのは、無限の選択肢の中から「この作品はこういう方向に持っていく」と決断することに他なりません。つまり内向き思考でアイディアが向かう先というのは、「作品のあるべき形」ということになります。
作品のあるべき形というと漠然としすぎていますね。
具体的には「構造」と「作品のテーマ」が挙げられます。
「構造」は「起承転結」とか「三幕構成」とかそんなやつです。簡単なところでは「ボケがあってツッコミが入る」とか「物語の最後にはオチがある」とか。
適当に話を考えるのではなく、起承転結という形になるようにアイディアを変えていく。なんとなく面白くできそうなアイディアが浮かんだときに、それを「ボケとツッコミ」という形になるように変えていく。
あるいはオチを先に決め、オチに至るまでを逆算してストーリーを考える場合も、オチを中心とした内向き思考が有効です。
このように考えると無限の選択肢もかなり絞られていきます。そして出来上がったストーリーは起承転結などきれいな構造の、まとまりのよいものになります。
アイディアを外向きに無限に広げるのではなく、閉じた形にして構成していくことで、アイディアが一つの作品としてまとまっていくのです。
【テーマに向かって】
もう一つ、「作品のあるべき形」として重要なのが、「作品のテーマ」です。
作品のテーマが「主人公がかっこよく敵を倒す」だった場合、敵を倒す方法として無限の選択肢があっても、卑怯な方法や味方を犠牲にする方法は選ばないでしょう。逆に「人間の醜さを描く」というテーマであれば、ストーリーをエグい方にエグい方に考えていくべきです。
テーマも無限の選択肢を狭める良い手段になります。しかしテーマが持つ力はそれだけではありません。テーマ次第で主人公がかっこよくなったり卑劣でエグい奴になったりするのです。それは作品をかっこいい作品にするかエグい作品にするか決めていることに他なりません。
テーマを決めればストーリーをどうするか決めやすくなるだけでなく、その作品がどんな作品かということも決定してしまうのです。このへんがまた奥が深いので、「テーマ」というものについてはまた改めてコラムで取り上げます。
【まとめ】
まとめです。
●外向き思考で無限にアイディアを出すだけではダメ。
●内向き思考によってアイディアをまとめると作品になる。
●まとめるには「構造」と「テーマ」が便利。
外向き思考が大事って言っといて、その逆の内向き志向もめっちゃ大事という話でした。
ややこしい話を長々としましたが、まあ、あまり深く考える必要はありません。
僕自身、いつも外向きや内向きということを意識しながらものを考えているわけではありません。ぼんやりと考えていたら良いアイディアが浮かんだり浮かばなかったりします。良いアイディアが浮かぶとき、自分の脳内ではどのように思考が展開されているのだろう、と考えてたどり着いたのがここまでの文章です。
なので外向き思考も内向き思考も特別な思考法というわけではなく、誰もが無意識にやっていることなのだと思います。ただ、無意識にやってることを意識的にやれば、よりアイディアが浮かびやすくなるんじゃないかと思っています。
ちなみに思考法というのは外向きと内向きだけではありません。
複線的思考とか立体的思考なんて言葉もあります。
僕はまだそれらを上手く言語化できていませんが、人に説明できるようなったらコラムに描くかもしれません。
それでは今回はこのへんで。
それに引きかえ内向き思考は有限で閉鎖的で、クリエイティブさのかけらもない負け犬の思考法であるかのように思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし内向きの思考にも良い点はあります。有限で閉鎖的であることの強みもあるのです。
今回は内向き志向が活躍する場面についてお話しします。
【無限は怖い】
基本的にアイディアを生み出すときは、たくさん生み出すことができた方がよいでしょう。しかし、実際にたくさんのアイディアを生み出すと困ったことになります。たくさんのアイディアのうち、どれを採用すればよいのか分からなくなってしまうのです。
ストーリーを考えているとき、主人公が敵を倒す方法をどうするか悩んだとしましょう。いい方法を思いついたとしても、もっといい方法があるかもしれません。自分が気付いていない致命的な見落としがあるかもしれません。アイディアは無限なので、無限の可能性があります。
ストーリーを思いついてマンガを描き始めたとしましょう。そこでもコマ割りや構図、セリフなど考えることはいくらでもあります。そしてそれぞれに無限の選択肢があるのです。
本編でも触れましたが、マンガは学校の勉強とは違い、正解はありません。
無限の選択肢の中から自分がベストだと思うものを選んでよいのです。
しかし選べるのは一つだけです。
マンガを描くという行為は「無限の選択肢の中から一つだけを選び出す」という行為の連続です。
ストーリーを考えるのもそう、絵を描くのもそう、キャラクターをつくるのもそう。
それが楽しいところでもあり、難しく、しんどいところです。
この問題は外向き思考では解決できません。
本編では選択肢を無限に増やせる、ものすごく強力でロマンのある思考法という面を描きました。しかし選択肢が増えると同時に、苦悩の種も芽吹いていくのです。
【まとめる=有限・閉鎖的】
そこで内向き思考です。有限で閉鎖的な内向き思考は、アイディアを野放図に広げるのではなく、一点に集約していくことができます。それにより無限の選択肢を減らしていくことができるのです。
そのときにポイントとなるのは、内向き志向の「内」とは何か、ということです。
本編では「問題」に対して内向きに考え、この問題を解くにはあーでもないこーでもないと考える様子を描きました。しかし先ほどの「アイディアを広げるのではなく一点に集約する」という観点からすると、問題に対して内向きに考えるというのは話が合いません。
無限に広がるアイディアを「特定の方向に向けて集約していく」というイメージになります。
それでは、このアイディアを集約していく先とはどのようなものなのでしょうか。
【きれいな構造を目指して】
内向き志向でアイディアを絞るというのは、無限の選択肢の中から「この作品はこういう方向に持っていく」と決断することに他なりません。つまり内向き思考でアイディアが向かう先というのは、「作品のあるべき形」ということになります。
作品のあるべき形というと漠然としすぎていますね。
具体的には「構造」と「作品のテーマ」が挙げられます。
「構造」は「起承転結」とか「三幕構成」とかそんなやつです。簡単なところでは「ボケがあってツッコミが入る」とか「物語の最後にはオチがある」とか。
適当に話を考えるのではなく、起承転結という形になるようにアイディアを変えていく。なんとなく面白くできそうなアイディアが浮かんだときに、それを「ボケとツッコミ」という形になるように変えていく。
あるいはオチを先に決め、オチに至るまでを逆算してストーリーを考える場合も、オチを中心とした内向き思考が有効です。
このように考えると無限の選択肢もかなり絞られていきます。そして出来上がったストーリーは起承転結などきれいな構造の、まとまりのよいものになります。
アイディアを外向きに無限に広げるのではなく、閉じた形にして構成していくことで、アイディアが一つの作品としてまとまっていくのです。
【テーマに向かって】
もう一つ、「作品のあるべき形」として重要なのが、「作品のテーマ」です。
作品のテーマが「主人公がかっこよく敵を倒す」だった場合、敵を倒す方法として無限の選択肢があっても、卑怯な方法や味方を犠牲にする方法は選ばないでしょう。逆に「人間の醜さを描く」というテーマであれば、ストーリーをエグい方にエグい方に考えていくべきです。
テーマも無限の選択肢を狭める良い手段になります。しかしテーマが持つ力はそれだけではありません。テーマ次第で主人公がかっこよくなったり卑劣でエグい奴になったりするのです。それは作品をかっこいい作品にするかエグい作品にするか決めていることに他なりません。
テーマを決めればストーリーをどうするか決めやすくなるだけでなく、その作品がどんな作品かということも決定してしまうのです。このへんがまた奥が深いので、「テーマ」というものについてはまた改めてコラムで取り上げます。
【まとめ】
まとめです。
●外向き思考で無限にアイディアを出すだけではダメ。
●内向き思考によってアイディアをまとめると作品になる。
●まとめるには「構造」と「テーマ」が便利。
外向き思考が大事って言っといて、その逆の内向き志向もめっちゃ大事という話でした。
ややこしい話を長々としましたが、まあ、あまり深く考える必要はありません。
僕自身、いつも外向きや内向きということを意識しながらものを考えているわけではありません。ぼんやりと考えていたら良いアイディアが浮かんだり浮かばなかったりします。良いアイディアが浮かぶとき、自分の脳内ではどのように思考が展開されているのだろう、と考えてたどり着いたのがここまでの文章です。
なので外向き思考も内向き思考も特別な思考法というわけではなく、誰もが無意識にやっていることなのだと思います。ただ、無意識にやってることを意識的にやれば、よりアイディアが浮かびやすくなるんじゃないかと思っています。
ちなみに思考法というのは外向きと内向きだけではありません。
複線的思考とか立体的思考なんて言葉もあります。
僕はまだそれらを上手く言語化できていませんが、人に説明できるようなったらコラムに描くかもしれません。
それでは今回はこのへんで。